看護師として病院に勤務している時に経験した不思議な出来事

ジグザグな雑文

こんばんは、ジグ・ザガーです。

私が介護・看護の現場で働き始めて、もうじき20年が経過しようとしています。仕事をしていく上で様々な経験をさせてもらいましたが、今日はその中で私が不思議だなと感じた三つの出来事について書きたいと思います。

『ありがとう』という最後の伝言

一つ目の出来事は、病院で働き始めて約一年が過ぎた頃の話です。ある朝、病棟に行くと、馬場和夫さん(仮名)がお亡くなりになって退院されていました。

夜勤明けの看護師(Aさん)が、私の顔を見るなり話し始めました。

看護師Aさん
ザガー君、昨夜ね、馬場さんが急変したんだけどね、そうなる少し前に突然ね、『青い制服の男の人にありがとうって伝えて欲しい』って言ったんだよ
えぇ~っ?

にわかにはAさんの言葉を信じられませんでした。その頃の私は、病棟で一人だけ水色の白衣を着ていました。男性職員も私以外には一人もいませんでした。

看護師Aさん
ベッドで休む前に、突然話し始めたから私もびっくりしちゃって

Aさんは非常に真面目な方で、冗談を言うようなタイプではありませんでした。

看護師Aさん
でもね、ハッキリと言ったんだよ

Aさんは、そう私に話している瞬間にも、驚きを隠せないというような表情をしていました。

看護師Aさん
『青い制服の男の人にありがとうって伝えて欲しい』って

馬場さんは脳梗塞の後遺症でほとんど発語することはなく、意味のある会話が成立しない方でした。その馬場さんが意味のある言葉をハッキリ口にしたと、看護師のAさんが私に興奮気味に伝えてきたのです。

看護師Aさん
馬場さんが突然ハッキリと発語してそんな事言うもんだからビックリしたんだけど、そうしたらその数時間後に急変してステルベンしちゃったんだよ

ステルベンとは看護用語で、亡くなる事を意味します。

馬場さんは日常生活においてはあまり介助を必要としない方でしたが、それでも、入浴や排泄の時には動作の一部に援助がいりました。馬場さんは、何故か私以外の職員の介助を嫌がりました。それが何故だったのかは、今となっては判りません。

看護師Aさん
きっと馬場さんは、自分が亡くなることを知っていたんだと思う

Aさんは、黙って聞いている私に話を続けました。

看護師Aさん
それで、最後にどうしてもザガー君にだけはお礼を言いたかったんだと思う

一時間ごとの巡視で心肺停止の状態を発見された時、馬場さんはベッドの上でとても穏やかな表情をされていたそうです。

落ち着かない病棟

二つ目の出来事は、看護師の資格を取って夜勤をするようになってからの体験です。

夕方、白衣に着替えて病棟に行くと、34名の入院患者さんのうち約10名の方が不穏の状態になっていました。

「不穏」とは文字通り「穏やかでない」という意味です。

ある方は普段より大きな奇声を発し、数名の方が普段より激しく徘徊し、入院患者さん同士の揉め事があり、病棟全体が騒がしく妙にざわざわとしていました。

今日はやけに騒がしいなあ

そう思いながら業務を始めた途端、それまでは頻脈ながらも安定していた心電図モニターのアラームがナースステーションに鳴り響きました。モニターを見ると、Bさんの心拍数が150台に跳ね上がっています。

ベッドサイドに駆け付け、バイタルサインを測定すると酸素飽和度が下がっていました。当直の医師に連絡して急変であることを告げ、いくつかの医療行為を実施しましたがBさんの容体が戻ることはありませんでした。

Bさんは急変から一時間も経たないうちに、この世から旅立たれました。電話連絡したご家族も、残念ながらご臨終に間に合いませんでした。

私が不思議に感じたのは、Bさんが亡くなった途端、それまで妙にざわざわして騒がしかった病棟が水を打ったように静まり返ってしまったことです。大きな奇声を発していた方も、普段より激しく徘徊していた数名の方々も、揉め事を起こした方たちも、全員が静かにベッドの上で横になって穏やかに休んでおられました。

人が亡くなる時には何か目に見えない力の働きがあり、その働きが病棟全体の雰囲気に影響を与えていたのかも知れません。

その働きがBさんが旅立たれた事によって去り、ざわついた雰囲気が一気に鎮まってしまったのではないでしょうか。静かさは朝まで続きました。

単なる偶然ではないのではないか、と私は感じました。

エレベーターホールでの会話

三つ目の出来事は、平成10年に病棟で勤務し始めた頃の体験です。

私は、入浴にお連れするため、車椅子に座った池田正子さん(仮名)をエレベーターホールに誘導しました。

池田さんは重度のアルツハイマー型認知症で、言語による意思の疎通は殆どとれない方でした。発語はあるのですが、その際には必ず独特のリズムに乗せて歌うように言葉を発します。

池田さん
お~な~か~♪ す~い~た~♪

発語によるコミュニケーションが図れると言っても、ご自分の要求(主に空腹)を一つか二つの単語を使って伝える事が辛うじてできる程度でした。

池田さん
は~ら~が~♪ へぇ~えっ~た~♪

そんな池田さんが、エレベーターホールでエレベーターの到着を待っている時、私の方も見ながら次のように歌い始めたのです。

池田さん
あんた~の~♪ こ~と~を~♪ おんな~の~♪ ひ~と~が~♪ み~て~る~♪

エレベーターホールには池田さんと私しかいませんでした。池田さんの言葉を聞いた時、私はすぐにある解釈に辿り着きました。

池田さんの言葉を聞くほんの数か月前に、私は母親を病気で亡くしていたのです。池田さんが歌うように言った『おんなのひと』とは、きっと、私の母親の事に違いない。母が私のことを見守ってくれていて、池田さんはそれを感じ取ったのだ。

私はそう解釈しました。

二人だけのエレベーターホールで、私は池田さんに質問しました。

池田さん、それって僕のお母さんの事?
池田さん

池田さんは何も答えてくれませんでした。

もしかしたら、認知症の方は常人の理解を超えた不思議な能力を持っているのかも知れません。私は霊の存在はまるで信じていませんが、人間の想い、愛、一念というものが、死と共に完全に世界から消え去ってしまうとは思っていません。

母親が子供を想う気持ちが、科学を超えた何らかの力となってこの世界に残っているのかも知れません。

普段、一つか二つの単語しか使わない池田さんの言葉を聞き、私は笑顔でお礼を言いました。

池田さん、教えてくれてありがとうね
池田さん

相変わらず、池田さんは何も言いませんでした。

最後に

以上の三つが、私が看護師として病院で勤務している時にした、不思議な体験でした。

三つのエピソードを書いてみて私は改めて、人間という生き物の持っている能力の不可思議さと、人間という生物の魅力の大きさを感じました。

人間ってスゴい。

人間として生まれてくることが出来て嬉しい。

地球に生まれて良かったぁ~!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

前に進む。たとえジグザグであろうとも。

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