面白いエッセイ『柴錬ひとりごと』の感想 人間心理が学べる歴史のエピソードを味わう 『教養』を持った人間の強さ

心に響く言葉

柴田錬三郎のエッセイ

よむぞう
エッセイで学ぶ『人間』といふもの

柴田錬三郎のエッセイ錬ひとりごと』を読みました。柴田錬三郎は小説家で、代表作に『眠四郎』シリーズがあります。

このところ誰のものとは特にこだわらずに、エッセイを読むことにハマっています。

私が好きなエッセイは、筆者の人柄が表れていて読んで心がリラックスできるようなもの、歴史のエピソードや科学的知識など知らなかったことを教えてくれるもの、個人的な面白体験談を綴ったものなどです。

エッセイの多くは、一つ一つの文章がくて情報量がそれほど多くないので、深く考えずにサラッと読めて頭が疲れません。黙々と目で活字を追う行為には毒性があります。

『柴錬ひとりごと』も、読んでいて頭と心がリラックスでき、なおかつ非常に面白かったです。

本書に登場する歴史エピソードを引用して紹介します。

「以下引用」

太田道灌は、和歌を能くし、「慕景集」という歌集も出している。

ある時、七人の家臣が、罪を犯し、処刑されることに反逆して、ひとつの館にたてこもった。

数百人がこれを囲んだが、死にもの狂いの勢いに圧倒されて討ち取ることができないまま、一昼夜をすごした。

その日、他出していた道灌は、翌日、帰って来て、この報告を受けると、一人の侍大将に、次のように、命じた。

「七人のうち、一人だけは助命してやる者があるゆえ、討手の勢は、心得て、みだりに討つな、と高声に云いふらせよ。それから、しばらく様子をうかがって、とび込むならば、七人ことごとく討ち取れるであろう」

侍大将が、その命令通りにすると、七人を、手もなく討ち取ることができた。すなわち、七人は、それまでは、死を覚悟していたので、猛烈に強かった。一人だけ助命してやる者がある、という高声をきいたとたん、―もしかすると自分ではあるまいか、と七人それぞれ、生への未練がわいて、縄がぶつぶつ切れるように、結束力を失ったのである。

道灌は、古歌の中に、「世の中に独り止まるものならば、若しや我かと身をや頼まん」とあるのを思い出し、その心理を利用したのである。

【『柴錬ひとりごと』 柴田錬三郎〈しばた・れんざぶろう〉(2003年、中公文庫)】

人間の心理を明らかにする歴史のエピソード

普遍的な心理に根ざしたような歴史上のエピソードを知ることは、人間という生き物を学ぶ助けになります。そして理屈抜きに面白いです。上で引用した文章に書かれている出来事も、非常に興味深いです。

絶体絶命で退路が完全に断たれた状態であれば死に物狂いの闘を続けられたのに、微かな逃げ道を見つけてしまった事で精神のたがが外れてしまって自滅してしまうというような事は確かにあります。

室町時代後期の武将・太田道灌が思い出した古歌

『世の中に独り止まるものならば、若しや我かと身をや頼まん』

の意味は、

『世の中にただ独り助かるとすれば、もしかしたらそれは自分ではあるまいか、否きっとそうだと、自分の身が助かる事を頼んで(望んで)しまう』

です。

よむぞう
心の糸が切れる

教養とは

引用したエピソードを読んで私が感じたのは、養』を身に付けた人間の強さ・偉大さです。

共に討ち死にする覚悟をした七人の家臣は、数百人もの敵を相手にしても怯まずに一昼夜ものあいだ奮闘を続けました。

それ以上の籠城を許してしまっては、取り囲んだ軍勢の評判と面子はガタ落ちになり、敵国からも戦力を軽視されて攻め込まれてしまいかねません。

そんなある種の危機をったのは、太田道灌の持っていた『教養』でした。

罪を犯して立て籠った七人の家臣が、太田道灌が思い出した古歌をそらんじるほどの『教養』を身に付けていたとしたら

「七人のうち、一人だけは助命してやる者があるゆえ、討手の勢は、心得て、みだりに討つな」

と言う敵兵の嘘・計略を見抜いたことでしょう。

インシュインは、

『教養とは、学校で学んだことをすべて忘れてしまった後に、残っているもののことである』

との言葉を残しています。

よむぞう
芸は身を助ける。教養は芸の一つ

未練を断つ

私は現在、看護師として勤務していますが、人生の目標を達成するために自分で事業を立ち上げようと考えています。

今日、紹介したエピソードはそんな私に

①退路を断って死に物狂いの覚悟で奮闘する人間の強さ

②「一人だけは助命」という言葉によって未練が芽生えてしまった人間の弱さ

という二つの普遍の人間心理を、あらためて教えてくれました。

私が起こそうと考えている事業についての詳しい内容は、今はまだ明らかにしませんが、いずれまたこのブログで報告させてもらおうと思っています。

この先、立ち上げた事業がどうなっても、最悪の場合は看護師として働ける、という自分の中にある未練・退路をキッパリと断ちます。

よむぞう
そしてワクワク楽しんで大・成・功!!!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

前に進む。たとえジグザグであろうとも。

 

 

 

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